クリスマスといや、
アメフト高校生には全国大会の集大成、
関東と関西それぞれのナンバーワンが雌雄を決する
“クリスマスボウル”という決定戦が催されるため、
巷の浮かれ気分とは一線を画して迎えるのが常だった。
そこへ到達出来る強豪は、
東と西それぞれの頂点に立った一校だけなのであり。
勝ち残ったチームは浮ついてる場合じゃないのだろうし、
そこへと至れなかった大多数のチームは、
負け惜しみから平静を保つか、
口惜しいまま、それでも決定戦を観に行くか。
「どっちにせよ、
世間のクリスマスとは空気や温度が違ったよな。」
どっちにせよ、なんて言いようをしたが、
この数年ほどは
王者となる顔触れもそうそう簡単にはブレたことがないほどで。
「王城の一人勝ちってのは、何とも面白くねぇ話だよなぁ。」
どんな強豪校でもその年その年のメンバーは違うと、
世間の人は言うのだろうが。
強いとされるチームにはそれなりの指導法があったり、
数多の人材が殺到するから、校内で既に競争があったりし、
常に切磋琢磨が要って、
結果、強い選手がひしめき合う“強豪”でいられるのだそうで。
そういった理屈は百も承知だが、
“だったら、画期的な練習を取り入れりゃあ、
普通レベルのチームだって
そこそこ叩き上げて強豪に追随出来んじゃねぇのかな。”
それこそ社会人チームと違って、
どんな綺羅星選手でも3年以上は在籍出来ぬ。
勝利を目指す指導を為せば、
あとは根性次第で、
王者へ噛みつく大穴チームにだってなり得るかも知れず。
「……で、
結局はクリスマスが二の次になっちまうんだよなぁ。」
あ〜あ、俺ってそんな夢見がちな子供じゃなかったのになぁと。
この場合は、クリスマスボウルを目指すことか、
それともサンタからのプレゼントや
好きな人との温かい団欒を期待することか、
どっちへの夢を口にしているのやらな子悪魔軍曹さん。
時折強く吹く風に、エアリーな金の髪を舞い上げられつつも、
内にはボアつきのしっかとしたダウンコートと
厚手のボトムという装備に守られていて、寒気までは感じぬか。
スタジアムのスタンド最前列、
摺られならされ黒いつやも出た手摺りに身を寄せ、
眼下のフィールドを飽かずにじっと見下ろしており。
QBから出たパス目がけ、
レシーバーとラインとがクラッシュして団子になり掛かっていた一団が、
だがだが、実に秀逸な体さばきを見せた選手の脱出から、
あっと言う間に形勢が決まって、
そこからは打って変わってするすると、
守備側には為すすべなく タッチダウンまでへと運んだ鮮やかさよ。
ホイッスルが鳴り響き、
ベンチに待機していたごつい顔触れが わあと一斉に立ち上がって、
「ルイも参加しねぇの?」
OBには違いないのによと、
傍らに立っていた長身の連れを振り仰げば、
そちらはさほど髪を崩してもない葉柱が、
「俺が入ると、どっちの肩持つんすかって揉めるしな。」
もう全国大会も終わったようなものだからと、
現役高校チームと、混成OBチームによる、
カメレオンズOBたちの特別ゲームが催されており。
実は現役高校生らにもカリスマ扱いされておいでの葉柱は、
公平を帰すためどっちへも加われないそうで。
それを訊いた子悪魔軍曹、ふ〜んと気のない返事をしたものの、
「来年もやるんなら主催に言っとけ。」
ルイの相手側には俺がつくから、
そうなったら色んな意味から五分五分だぞって。
……色んな意味からってのは何なんだ。
さてなと笑って、ばふりとばかり
そちらも分厚いライダージャケットの上から
頼もしい胴へ抱き着けば、
「〜〜〜っ!」
「あっ。」
「こらこら、」
眼下だったフィールドから
何やら声にならない喚声や悲鳴が聞こえたような気もしたが、
木枯らしのうなりと解釈し、
知らんぷりで通した妖一くんだったそうでございます。
〜Fine〜 14.12.22.
*いやはや、お寒い12月ですよね。
重ね着して凌ぐのは
お財布には助かるけれど体が動かないので不健康だと
こんな早くに思い知らされる冬は久々でございます。
ウィンタースポーツに励む若い人の体力とか つくづくと羨ましい。
めーるふぉーむvv
or *

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